防災用語ABC
消火器
人が持ち運び移動できる程度の容器から、粉末その他の消火剤を圧力により放射して消火を行う初期消火用の器具です。 消火剤には、りん酸塩等を主成分とした粉末薬剤や、炭酸カリウムの水溶液である強化液、ハロン1301等を放射するガス系消火剤があります。 消火器の設置は小型の消火器では歩行距離20m毎、大型消火器では歩行距離30m毎、さらに電気室や多量の火気使用場所にも設置が必要となります。
一般的な粉末消火器
屋内消火栓
屋内消火栓は、消火栓格納箱内に収納されたホースとノズル及び消火栓ポンプで構成されています。 消火栓ポンプの起動は、消火栓格納箱に併設された自動火災報知設備の発信機を押すか、収納箱内の起動専用スイッチで起動します。
屋内消火栓
屋外消火栓
屋外消火栓は、建物の2階までの消火に用いられる消火設備です。
屋外消火栓の構成は基本的には屋内消火栓と同じですが、ホース・ノズルのサイズが大きく、放水量も屋内消火栓が毎分130リットル以上(1号消火栓)なのに対し、
屋外消火栓は毎分350リットル以上と倍以上になっています。地階を除く2階までの建物の面積が耐火建築物にあっては9000㎡以上の建物に設置されることから、倉庫・工場等に設置されています。
スプリンクラー設備
火災が発生すると、熱を加えられたスプリンクラーヘッドがはじけ飛んで水が放射され、火災を鎮火させます。 スプリンクラーヘッドが接続されている配管に常時水がみたされているタイプを湿式、満たされていないものを乾式といい、他にも予作動式等のタイプがあります。
スプリンクラーポンプとスプリンクラーヘッド
水噴霧消火設備
設備の基本はスプリンクラー設備と同じですが、水噴霧ヘッドから散水される水が、スプリンクラーヘッドからの散水に比べて細かい粒子状の水滴が放射されるため、 火災発生区画を包み込むように被い鎮火させます。油火災にも有効なことから、駐車場などでも設置できます。
泡消火設備
火災が発生した場合、泡放射ヘッドから大量の泡を放射して火災を被い、窒息効果と泡水溶液の冷却効果で鎮火させます。 油火災に有効なことから、石油製品を取り扱う事業所に設置されています。また、街中でも燃料を積んだ自動車の火災に有効なため、駐車場に設置されています。
ハロン消火設備
燃焼抑制作用のあるハロゲン化物を放射して火災を鎮火させる消火設備です。電気設備室や駐車場等に設置されています。
ハロンボンベと放出表示灯。(放射区画内にガスが充満していることを知らせるためのもの)
不活性ガス消火設備
窒息作用のある二酸化炭素や、アルゴンガスと窒素ガスの混合物(IG-55)を放射して火災を鎮火させる消火設備です。 ハロン消火設備と同じように電気設備室や駐車場等に設置されています。不活性ガスには窒息作用があるため、常時人がいる部屋には設置できません。
ボンベ室と手動起動装置
粉末消火設備
消火器と同じりん酸塩類等の消火薬剤を加圧ガスで火災発生区画に放射して火災を鎮火させます。スプリンクラー設備に適さない電気室や、 油火災に有効なことから駐車場に使用されます。
移動式粉末消火設備
自動火災報知設備
火災感知器により常に煙や熱を警戒して、火災が発生すると火災受信機では警報音とともに火災発生場所を表示し、 さらに建物全体でもベルやサイレンの鳴動で火災の発生を知らせる設備です。
火災受信機と煙感知器
非常警報設備
火災を確認した人が、非常火災警報設備の起動ボタンを押すことにより、建物にベルやサイレンの鳴動で火災発生を知らせる設備です。 自動火災報知設備の設置が必要ない小規模な建物に設置されています。
消防機関へ通報する火災報知設備
手動起動装置を操作することで電話回線を用いて消防機関を自動的に呼び出し、録音された物件名・住所を通報することが出来る設備です。 旅館・ホテルや、老人ホーム等に設置されます。
老人ホームに設置された消防機関へ通報する火災報知設備
非常放送設備
管理室等に非常放送用の放送アンプを設置して、建物各部屋に配置されたスピーカーから火災発生および避難誘導の放送を行う設備です。 自動火災報知設備からの火災信号を受け取って、自動的に火災放送を行うこともできます。
非常放送アンプとスピーカー
誘導灯
誘導灯は火災発生時に避難経路を指示するために設けられています。避難出口に設けられた「避難口誘導灯」と、避難出口までの経路を案内する「通路誘導灯」があります。 また、劇場や映画館で座席脇を照らしている小さな照明も「客席通路誘導灯」という誘導灯設備の仲間です。
避難口誘導灯と通路誘導灯
連結送水管
連結送水管は、火災発生時に駆けつけた消防隊が、火災発生階まで消防ホースを縦に伸ばさなくても済むように、あらかじめ縦配管を設けたものです。 連結送水管は建物の竣工から10年が経過したら、水圧を加えて耐圧試験を行い、配管に漏れがないかを確認します。以後、3年ごとに耐圧試験を行う必要があります。
連結送水管送水口と放水口
連結散水設備
地下で火災が発生すると煙が充満することから、消防隊でも火災現場に近づくことは困難となります。
連結散水設備は、一定規模の面積を持つ地下階に、スプリンクラー設備と同様の散水ヘッドと配管を設置したものです。スプリンクラー設備と異なることは、
連結散水設備自体には送水ポンプがなく、消防隊のポンプ車からの送水で散水ヘッドから放水させます。消防隊の消火活動を助ける設備です。
連結散水栓放水ヘッドと送水口
避難器具
避難器具は火災の際に、下記の器具を使用して避難するものです。
避難器具にはさまざまな種類があります。
金属製避難はしご
緩降機
滑り台
救助袋
建物の階数、用途によって適した設備が設置されています。
緩降機降下シーンと救助袋
防火設備
防火設備は、防火扉や防火シャッター、空調ダクトを閉鎖する防火ダンパー等があります。 火災による煙や熱を感知して作動し、防火区画を形成します。ひとつの防火区画内に火災をとどめることで、火災の延焼や煙が拡散するのを防ぎ、被害の拡大を防ぎます。
火災時に空調ダクトを閉鎖する防火ダンパーの例
特定防火対象物
飲食店や物販販売店、病院や老人ホームなど、不特定多数の人が利用し、火災の際に被害が大きくなる恐れがある用途(特定用途)に利用されている建築物。
特定防火対象物の対象用途はこちらを御確認下さい。
特定用途防火対象物では、火災予防上の観点から厳しい防火管理が要求されています。
- 特定防火対象物では、消防設備点検の結果を1年に1回提出。
- 竣工当時の技術基準で妥当な消防設備であっても、特定防火対象物に供される防火対象物であれば、現行の基準に適合する消防設備を設置維持する。(遡及適用)
特定1階段等防火対象物
特定防火対象物が防火対象物の地階又は3階以上の階にある場合で、 階段が屋内にしかないものにあっては2、屋外階段が設置されているものにあっては1以上の階段が設けられていないもの。(延べ床面積は関係なし)
屋内階段が1つしかない建築物においては、避難経路が限られます。特定用途が地下階及び3階以上の階に特定用途があると、 被害の拡大が懸念されることから、特定用途の面積に関係なく特定用途防火対象物として、建築物の管理権原者に厳しい防火管理を求めています。
特定1階段防火対象物の例
防火管理者
- 防火管理者とは
- 政令で定める防火対象物で、管理の権原を有するものは、防火管理者を定め、消防計画の作成し、当該消防計画に基づく消防訓練の実施等、防火管理上必要な業務を行わせなければなりません。 そして、管理の権原を有するものは、防火管理者を定めたとき、又は解任したときは遅滞なく所轄の消防長又は消防所長に届けなければなりません。(消防法第8条)
- 防火管理者が必要な建物は
- 防火管理者が必要な建築物は収容人員によって決められます。さらに、収容人員の算定はその建築物の用途と延べ面積で求められます。
該当する建築物の延べ面積 | 該当する収容人員 | 防火管理者に必要な資格 |
---|---|---|
避難困難施設が入っている建物 ※令別表第一:6項(ロ)に該当する用途 延べ面積に関係なく |
収容人員10人以上 | 甲種防火資格者 |
上記以外の 特定防火対象物で延べ面積300㎡以上 |
収容人員30人以上 | |
その他の防火対象物で延べ面積500㎡以上 | 収容人員50人以上 |
該当する建築物の延べ面積 | 該当する収容人員 | 防火管理者に必要な資格 |
---|---|---|
避難困難施設が入っている建物を除く 特定防火対象物で延べ面積300㎡未満 |
収容人員30人以上 | 甲種防火管理者又は 乙種防火管理者 |
その他の防火対象物で延べ面積500㎡未満 | 収容人員50人以上 |
- 防火管理者の資格は
- 防火管理者になるには防火管理者講習を受けて甲種防火管理者又は乙種防火管理者の資格が必要となります。 防火管理者講習は所轄の消防署のホームページで開催場所日程が掲載されています。申し込みは各消防署で行います。
- 管理権原者
- 建物の所有者や賃借人が該当します。具体的には、
「管理権原者とは、消防法上の用語で、当該防火対象物について、防火管理上の管理を法律上正当に行使できる者のことで、当該事業所の代表権と自由処分権、勤務するものについて、人事上の権限を有しているものをいいます。 例えば、株式会社だと代表取締役ということになります。(一般例として) また財産権を有するもの(例として、あるビル内の事業所を他のビルへ転居させる権限をもつもの)であるので、支店などの支店長では、権限を認められない可能性はあります。」 東京消防庁新宿消防署ホームページより